2025 年 64 巻 2 号 p. 166-174
インクジェットにおけるピコリットルサイズ液滴の蒸発現象を可視化実験で計測し,既存の予測モデルとの比較とシミュレーションによる考察を行った.可視化装置はピエゾ方式のインクジェットヘッド,カメラ,LED,気圧・温湿度計からなり,PET(polyethylene terephthalate)シート上の純水液滴の接触半径と体積の時間変化を計測し,蒸発速度を算出する.孤立液滴および1列に配置した複数液滴での結果を既存の予測モデルやシミュレーションと比較した.孤立液滴では潜熱による蒸発速度低下が予想され,熱と蒸気拡散の連成シミュレーションで求めた温度低下を考慮することで,蒸発速度の予測値は実験とよい一致を示した.複数液滴では可視化実験により,液滴間距離が近くなると蒸発速度が低下する傾向が確認された.また熱と蒸気拡散の連成シミュレーションで実験の傾向を再現した.