抄録
イオン性物質を含む液晶材料の低周波領域における誘電特性に対し、空間電荷分極の観点から検討を行った。交流電場下におけるイオンの拡散方程式を解くことにより得られる誘電率、誘電損率に対する理論式において、交流電場一周期内でのイオンの拡散距離が試料厚より十分小さいという条件を除いて得られる式は緩和型の誘電分散を表わし、液晶材料5CBを実測して得られた誘電率、誘電損率の周波数特性を良く説明することがわかった。この結果得られたイオンの拡散定数の値は、走行時間法により測定した移動度の値より算出される拡散定数の値とほぼ等しいことを確認した。