草と緑
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農薬の安全性について
與語 靖洋
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2021 年 13 巻 p. 13-25

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抄録

2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」における重要業績評価指標(KPI)として,化学農薬使用量の50%低減(リスク換算)が掲げられている.一方,本稿で主に扱う除草剤を含む化学農薬(以後“農薬”とする)は,植物保護に関連する作業を省力的かつ低コストで実施するための欠かせない道具であり,緑地における植生管理も例外ではない.2020年の農薬取締法の一部改正は,農薬の安全性のより一層の向上等を目指して,農薬規制の国際的動向を踏まえたリスク分析の導入や再評価制度への移行等を柱としている.農薬取締法は,内閣府,農林水産省,厚生労働省,環境省等の複数の省庁が関与しており,改正後の今回の改正においては,旧法から増加して全体で100を超える個別試験がリストされている.農薬に関する法律は,その多様な使用場面から,食品衛生法,水道法,水質汚濁防止法,土壌汚染対策法等,同法以外の複数の法律が省庁横断的に適用されており,数多ある化学物質の中で,農薬はヒトと環境への影響について最も厳しく管理されている.食の安全については,ADI(Acceptable Daily Intake,一日摂取許容量)やARfD(Acute Reference Dose,急性参照用量)をベースに残留農薬基準や農薬登録基準が定められている.環境影響については,土壌,水,大気中の挙動を把握したうえで,作業者や生活環境動植物に対するリスク評価が行われる.さて,除草剤や抑草剤の最大の特徴は選択作用性であり,安定的に選択幅を確保すること,すなわち作物への安全性が求められる.それらには省力化や作物や作業者等への安全性向上を目指した様々な製剤や処理方法があるが,日本の使用環境への適性も厳しく求められる.農薬は,有害性と曝露からその影響を把握するリスク管理が行われている.これらのリスク管理が充分であるか一律に述べることはできない一方で,過度に安全側に管理することも決して科学的とは言えない.今後は植物保護の道具としてのベネフィットを加味したレギュラトリーサイエンスを導入することで,農薬使用者から一般市民まで幅広い利害関係者間で情報共有することが求められるであろう.

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© 2021 特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所
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