2019 年 39 巻 3 号 p. 391-393
症例は47歳男性, 体幹が右に傾く失調性歩行を主訴に来院した。小脳疾患などの頭蓋内病変が疑われたため頭部CT及び頭部MRI施行するも明らかな頭蓋内病変は認めなかった。右背部に手拳大の皮下腫瘤を認め, 体表超音波検査を施行すると皮膚直下にエコーフリースペースを認めた。腰部皮下膿瘍と診断, 切開排膿術及び抗菌薬治療を行うと失調性歩行は改善した。後日, 造影CTを施行すると, 右腰腸肋筋外周から腰方形筋背側に及ぶ膿瘍形成を認め, 最終的に傍脊柱起立筋膿瘍の診断に至った。脊柱起立筋は, 腸肋筋, 最長筋, 棘筋から構成され, 片側のみが動くと側屈, 回旋する。本症例では, 膿瘍周囲の脊柱起立筋へ炎症が波及し, その結果として右のみの脊柱起立筋が収縮し, 右に傾き失調性歩行となったと推測された。