2020 年 76 巻 5 号 p. I_97-I_107
アジアは人口増加や経済成長により排出量の増加が見込まれるため,気候変動の緩和を実施する上で重要な地域である.パリ協定に示された1.5°C目標の達成に必要なGHG削減策や経済的な影響の重要性は高い.本研究はアジア8カ国を対象に,経済モデルを用いて2050年までの温室効果ガス排出削減に伴うエネルギー消費の変化や経済影響を推計し,各国において有効な排出削減策を明らかにするとともに,重回帰分析を用いてGDP損失を説明する推計式を作成し経済的な影響の要因を分析した.その結果,大幅な排出削減を行う際にBECCSの利用が重要であることが示された.また,重回帰分析の結果からGHG排出の増加率やエネルギーに対する依存度,経済水準がGHG排出削減によるGDP損失に影響を与えることが示された.