胎児治療の倫理的課題に関する専門家の認識を把握するため、国内で胎児治療を実施している主要施設の責任医師を対象に、半構造化インタビュー調査を実施した。特に、胎児治療における診療と研究の区別、および胎児と妊婦の位置づけに着目した。その調査の結果から、(1)診療と研究の連続性、(2)エビデンスの乏しい胎児治療に対するスタンスの違い、(3)妊婦と一体である患者としての胎児が析出された。専門家の間には、胎児治療領域の境界性故の、当該介入の有益性に関する慎重な見方が見られ、特にエビデンスの乏しい介入に対しては胎児の利益の可能性とリスクの回避のどちらを優先すべきかといった立場の違いが明確に認められた。また、そうした慎重な姿勢と関連して、妊婦のリスクを軽んじない姿勢が少なからず見られ、胎児は妊婦と一体である患者と捉えられていた。このことから、胎児治療の現場は必ずしもthe twopatient modelの視点に則って動いてはいないことが示唆された。