抄録
臼歯部咬合支持のない症例においては,歯牙の喪失により歯根膜からの末梢入力の減少や咬合高径の低下により下顎の偏位(顎関節の偏位と筋緊張),咀嚼筋群,口腔周囲筋や舌の不調和を生じ顎口腔系機能障害を引き起こしていることが多く,治療の際には下顎位や側方運動路の設定に配慮することが重要である.
今回,上記に示した症状を持つ患者に対し機能的咀嚼系を再構築するために,上下顎に治療用義歯を装着してマウスボリュームの回復,下顎位の安定,左右犬歯を中心とした側方運動路の付与とリハビリトレーニングを行った.その結果,患者の主訴である咀嚼障害, 睡眠障害が改善され,6カ月後に上下顎に金属床を用いた部分床義歯を装着した.