2016 年 36 巻 3 号 p. 192-
緒言: 下顎隆起とは,外側性骨増生の一つで下顎臼歯部舌側に定所性に生ずるもので,咬耗など過度の咬合力を推察できる臨床所見と合併し発症していることから,古くから長期にわたる咬合力の産物であると認識されてきた.しかし,その発生機序に関する報告は少ない.今回,三次元有限要素解析および免疫組織学的検査により下顎隆起の発生機序について検討したので報告する.材料:上下の歯が比較的均衡に接触していると思われるアングル1 級を呈する患者のCT 画像データをMECHANICAL FINDER version 5.0(計算力学センター,東京)にてモデル化し,咀嚼筋を模倣した運動条件から,咬頭嵌合位による咬合を模した条件(Case 1),側方運動を模し偏心荷重が加わる条件(Case 2)の応力分布から下顎骨体の力学的挙動を評価した.また,採取した骨隆起を免疫組織学的に評価しメカニカルストレスと骨隆起との関係を調べた.結果:有限要素解析により応力集中部位と下顎隆起の発生部位が 一致した.また,免疫染色によりDMP-1 の顕著な発現を認め,下顎隆起がメカニカルストレスに関与することが示唆された.