昨今では顎関節症の原因として,解剖学的要因,外傷要因,咬合要因,行動要因,精神的要因が考えられており,正常機能に外傷,ストレスなどのイベントが起こり,それが患者の生理的耐性を超えたとき,顎関節症状が生じるといわれている.そして,治療としての第一選択は,機能訓練(リハビリテーション)とスプリント療法といった可逆的な保存療法が優先されている.しかし,この保存療法は対症療法である.そのため歯科で扱う顎関節症治療においては,咬合由来であるか否かの鑑別診断を最初に行い,咬合の関与が疑われた場合,咬合に対して原因除去療法を行う必要がある.今回,咬合因子により非復位性顎関節円板障害(顎関節症病態分類 顎関節円板障害(III 型)b:非復位性)を発症した疑いのある症例に対して,スプリント療法を用いて咀嚼関連筋群と顎関節部の安定を図り,顎運動機能の改善がみられたため,エックス線画像所見にて関節窩内における下顎頭の位置を確認しながら咬合再構成を行い,主訴であった顎関節部の症状と咀嚼障害を改善することができたので報告する.【顎咬合誌 38 (3):182-188,2018】