日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
全身の皮膚炎を主訴とする患者に対して
坂口 政磯
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2018 年 38 巻 3 号 p. 189-197

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抄録

居住環境,衛生環境,食環境,水,土壌,大気環境等,多くの環境要因の変化により,アレルギー疾患患者の増化が先進国での社会問題となっており,わが国でも重点課題の一つとして挙げられている.アレルギー反応とは,特定の抗原に対して過剰に起こる免疫反応であり,外来の異物(抗原)を排除するために働く生体にとって不可欠な生理機能である.アレルギー疾患には様々な原因と発生機序があるが,歯科領域に関連する金属アレルギー疾患も近年注目されるようになってきている.最近になって,歯科治療の補綴処置における材料は脱金属の流れになってきているが,長年金属修復が主流であったため,歯科的要因による金属アレルギー症状から日々の生活に支障をきたす人は少なくないと思われる.ここで示す症例は全身の皮膚炎を現病歴に持ち,大学病院皮膚科で行った皮膚アレルギー試験(パッチテスト)により金属アレルギーが皮膚炎の原因と診断された患者である.口腔内所見では多数歯にわたり金属による補綴修復物が見られた.そのため口腔内の金属の除去療法を行いながら患者の皮膚症状を皮膚科と連携し経過観察し,約一年後,皮膚症状の改善に至り,また再補綴によって咬合機能の回復も行い,口腔内および全身の健康回復を得られた.【顎咬合誌 38(3):189-197,2018

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© 2018 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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