顎関節症は,今日,全身的心因的な要因によって引き起こされる多因子性の疾患であると定義されている.しかし,顎関節症を呈する患者に,明らかな咬合の異常を見出したとき,歯科医師は,その咬合異常を看過して主訴に限局した対症療法的な保存療法を行うべきではないだろう.積極的な原因除去療法として,咬合の再構成を行うには,顎機能障害の病態が,咀嚼関連筋群の異常か,顎関節包内の異常か,診断した後,可逆的な処置により症状の改善を確認することが前提となる.鑑別診断から,復位性顎関節障害と変形性顎関節症を併発したものと判断し,顎機能を回復し,顎運動の安定を観察することにより,咀嚼関連筋群の調和を認め,良好な結果が得られている顎関節症の治療例を報告する.【顎咬合誌 39(3):207-215,2019】