抄録
電気自動車(EV)等の次世代自動車の将来普及状況を定量的に分析するには,その自動車購入行動を正しく解析する必要がある.本研究の主目的はEVの航続距離への不安の有無が自動車購入行動にどう影響するのかを定量的に解析することである.具体的には,EV用急速充電スポットの整備状況及び自動車購入用途により4つの場面想定を行い,それぞれアンケート調査及びコンジョイント分析を通して自動車購入における各要因(初期費用,維持費用,車種,クラス)のユーティリティスコア及び平均相対重要度を算出し比較検討を行った.その結果,回答者の所得階層を考慮しない分析では,充電スポットが整備されていない場合,ガソリン自動車(GV)は自動車購入においてプラス要因,EVはマイナス要因となり,充電スポットが整備されている場合はEVがプラス要因,GVがマイナス要因となった.また,充電スポットが整備された場合の方が車種の平均相対重要度が低下すること等が明らかとなった.所得階層別の分析では,充電スポットが整備されていない場合では高所得者の方が車種の平均相対重要度が高く,充電スポットが整備された場合では低所得者の方が高くなった.また,低所得者の方が初期・維持費用を重要視していることなどがわかった.