日本地域看護学会誌
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Print ISSN : 1346-9657
閉じこもりがちな高齢者を支える住民の力量形成の過程における大学研究者の役割 : 現場保健婦との実践研究を通して(地域看護活動報告)
藤田 真実伊藤 美樹子三上 洋有馬 和代志村 雅彦
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2000 年 2 巻 1 号 p. 69-75

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抄録

目的:大阪市大正区N地域において『つどいの場』の参加者の力量形成を目的とした活動を保健婦が行うにあたって,大学研究者は保健婦が問題提起した活動の第一段階からかかわり,ともに地域活動を行った.その中で,理論の活用や調査の実施・分析などの面から側方的な支援を行い,保健婦と大学研究者が地域活動に一緒に取り組む礎を築いた.現場と大学が互いにかかわりをもって活動した例の1つとしてその成果を報告する.方法:大正区N地域において,保健婦と協同して『つどいの場』参加高齢者と支える住民の力量形成を目的とする地域活動を行った.活動内容は,(1)住民参加による質問紙調査を実施して,その結果報告会を開催し,(2)(1)の成果を踏まえ,他の地域組織で今後の『つどいの場』活動について考える会合を実施した.(3)これら全体を通じで活動内容の整理と評価を行った.成果:(1)『つどいの場』に参加する閉じこもりがちな高齢者と地域ネットワーク委員は『つどいの場』の必要性を再認識し,主体的に活動するようになった.また,理想と現実のギャップを埋めるためにできることをそれぞれの立場で考えることができた.(2)PTAや子供会,老人会などの地域組織は『つどいの場』との協同活動に意欲を見せ,実際に計画(一部はすでに実施)した.さまざまな地域住民が交流できる兆しが見え,『つどいの場』が地域とのつながりをもって活動を広げるようになった.(3)保健婦と大学研究者は共同で活動初期からの経過と成果を整理・評価し,報告書を作成した.また,活動の経過を学会で発表した.考察:(1)活動を通して,集い参加者の力量形成は個人レベルだけでなく地域組織同士のつながりを持った組織レベルまで達成された.(2)保健婦は著者らとのかかわりを通じて,日頃の活動を客観的に評価することができ,研究的な営みに基づいた活動のあり方について学習する機会となった.大学研究者は,地域に研究拠点をもつことで研究活動の成果をより身近に感じることができ,研究を発展させていきやすく,地域の発展に寄与するという見地からも社会的責任の一端を遂行できると言える.こうした点から,地域と大学との共同の活動は意義深いと考える.

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© 2000 一般社団法人 日本地域看護学会
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