目的:諸外国の地域で生活する精神障害者の暴力的被害について暴力の内容,関連要因,研究方法を明らかにし今後の研究課題と日本の保健師による活動への示唆を得る.
方法:2021年9月にPubMedとCINAHLを用いて精神障害者と被害に関連するキーワードにより文献検索を実施した.2015年以降出版の地域で生活する精神障害者の暴力的被害に関する実証データを収集した文献を選択し,さらに研究の質評価により分析対象文献15編を抽出した.分析対象文献の詳細を表に記し特徴を質的に統合した.
結果:身体的暴力,性的暴力と心理的暴力はほぼすべての文献で扱われていたが,経済的搾取,ネグレクト,家族からの暴力,公共における暴力を扱った文献は少なかった.暴力的被害全体と家族からの暴力についての関連要因は以前のレビューと一致していたほか,被害の非通報,女性,非雇用が新たな知見として示された.研究デザインは,横断的研究,コホート研究,無作為化比較対照試験,質的研究が採用されていた.
考察:今後は,暴力的被害を身体的・性的暴力と共に心理的暴力,経済的搾取とネグレクトを含めて包括的に捉える視点と,公共における暴力の研究が必要である.家族からの暴力的被害の予防には経済的自立を目指した就労支援が望ましい.研究デザインは要因分析から実践介入へと傾向が変化してきていた.日本では統計資料や保健師を対象とした研究アプローチが可能である.