日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
25 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 森永 朗子, 原田 春美, 緒方 久美子, 兼岡 秀俊
    2022 年 25 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住男性高齢者の社会活動参加に関連する要因を明らかにし,男性高齢者の社会活動への参加を促進する支援のあり方について考察することを目的とした.

    方法:A市在住の65歳以上の男性高齢者を対象とし,無記名自記式アンケート調査を実施した.社会活動に関する質問項目を因子分析し抽出した下位因子と,個人的側面,身体的側面,心理的側面,生活的側面,社会的側面との関連について分析した.

    結果:980人に調査票を配布し,416人を分析対象者とした(有効回答率42.5%).社会活動に関する質問項目を因子分析し,「地元との交流」「個人の楽しみ」「継続する学び」の3因子を抽出した.すべての因子と有意な関連があった項目は「経済的余裕」「歩行への自信」「老研式活動能力指標」「地域コミットメント尺度」であった.「地元との交流」活動でのみ関連がみられた項目は,疾患がない人,後期高齢者であり,「個人の楽しみ」活動でのみ関連がみられた項目は,前期高齢者であることであった.

    考察:男性高齢者が社会活動へ参加するために,介護予防支援や移動への支援,ICTの活用が効果的と思われる.切れ目なく社会活動に参加するためにすべての年代の人が「地元との交流」活動に参加できるよう支援することも有効であると考えられる.

  • 帆苅 なおみ, 石川 麻衣, 松井 理恵, 佐藤 由美
    2022 年 25 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:労働者のヘルスリテラシーの概念を明らかにし,産業保健看護職による労働者のヘルスリテラシー向上の支援の示唆を得ることを目的とした.

    方法:Rodgersの概念分析の方法に基づいて分析した.2008~2020年に公表された25文献(日本語文献23,英語文献2)を分析対象とした.

    結果:【健康診断を有効な健康情報として理解し活用】【健康・仕事・家庭を連動させて理解】【健康・仕事・家庭の調和が出来る行動を実践】【社内外の専門家の支援】【同僚やパートナーからの支援】【同僚・職場・企業の健康づくりに寄与】の6つの属性および,6つの先行要件,3つの帰結が抽出された.

    考察:労働者のヘルスリテラシーは「健康診断結果を有効な健康情報として理解・活用し,自身の健康を仕事と家庭を連動させて理解し,それらの調和が出来る行動を実践することであり,社内外の専門家や同僚やパートナーの支援を得ながら実施している.その結果,同僚や職場,企業の健康づくりにも寄与している.そして,それらにより,個人のセルフケア力を向上させ,健康状態を良好にし,健康的な職場・組織・企業を形成していくことである」と定義した.以上から,産業保健看護職の支援においては,健康診断の機会を活用することと労使協働での課題解決を促進することが重要であるという示唆を得た.

総説
  • 木村 佳菜, 佐々木 明子, 津田 紫緒
    2022 年 25 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:諸外国の地域で生活する精神障害者の暴力的被害について暴力の内容,関連要因,研究方法を明らかにし今後の研究課題と日本の保健師による活動への示唆を得る.

    方法:2021年9月にPubMedとCINAHLを用いて精神障害者と被害に関連するキーワードにより文献検索を実施した.2015年以降出版の地域で生活する精神障害者の暴力的被害に関する実証データを収集した文献を選択し,さらに研究の質評価により分析対象文献15編を抽出した.分析対象文献の詳細を表に記し特徴を質的に統合した.

    結果:身体的暴力,性的暴力と心理的暴力はほぼすべての文献で扱われていたが,経済的搾取,ネグレクト,家族からの暴力,公共における暴力を扱った文献は少なかった.暴力的被害全体と家族からの暴力についての関連要因は以前のレビューと一致していたほか,被害の非通報,女性,非雇用が新たな知見として示された.研究デザインは,横断的研究,コホート研究,無作為化比較対照試験,質的研究が採用されていた.

    考察:今後は,暴力的被害を身体的・性的暴力と共に心理的暴力,経済的搾取とネグレクトを含めて包括的に捉える視点と,公共における暴力の研究が必要である.家族からの暴力的被害の予防には経済的自立を目指した就労支援が望ましい.研究デザインは要因分析から実践介入へと傾向が変化してきていた.日本では統計資料や保健師を対象とした研究アプローチが可能である.

研究報告
  • ─会食会参加者への調査をとおして─
    廣地 彩香, 上野 昌江, 大川 聡子, 根来 佐由美
    2022 年 25 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:会食会に参加した独居高齢者の低栄養の高リスクと身体的・心理社会的健康との関連を明らかにする.

    方法:A市の独居高齢者会食会に参加している対象者に,無記名自記式質問紙調査を行った.従属変数をNutrition Screening Initiative(NSI)により評価した低栄養リスク(高リスク=1)とし,独立変数を身体的・心理社会的健康として多変量ロジスティック回帰分析を行った.

    結果:すべての質問に回答した283人(有効回答率78.0%)を分析対象とした.本研究における低栄養の高リスク群は90人(31.8%)であった.高リスクと関連があったのは,「糖尿病で通院あり」(オッズ比3.25,95%信頼区間1.41─7.52),「食べ物の飲み込みにくさあり」(オッズ比4.03,95%信頼区間1.79─9.09),「主観的健康感が健康以外」(オッズ比4.91,95%信頼区間2.32─10.40),「友人に会う頻度が週1回未満」(オッズ比2.39,95%信頼区間1.23─4.64),「家族に食料品の買い物を頼むことがある」(オッズ比10.96,95%信頼区間1.06─113.82)であった.

    考察:独居高齢者を対象とした会食会の参加者の約3割が低栄養の高リスクであり,先行研究における要介護認定を受けているものと同程度もしくは多かった.糖尿病通院歴が低栄養の高リスクと関連していたため,糖尿病の通院や食事療法の状況を確認し健康相談を勧奨することが低栄養の高リスクに有用であると考える.また,独居高齢者が買い物の自立を継続できるような支援や食に関する社会資源の拡充も低栄養の高リスク予防につながると考える.

資料
  • 岡野 明美
    2022 年 25 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/27
    ジャーナル フリー

    目的:認知症高齢者の生活支援に向けた地域包括支援センター保健師のコーディネーションの現状と課題を明らかにする.

    方法:全国の地域包括支援センター保健師509人に郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った.調査内容は,個人属性,認知症高齢者の生活支援に向けたコーディネーション,地域づくり活動項目(地域ケア会議の参加回数,地域診断実施の有無)とした.分析は,記述統計,個人属性と地域づくり活動項目との関連についてMann-Whitney U検定を行った.

    結果:分析対象は136人(有効回答率26.7%).対象者の平均年齢は42.2歳であった.認知症高齢者をアセスメントし,医療と介護につなげる項目の得点平均値は4.0~4.5でおおむね実践していた.しかしBPSDや治療中断,税金等の滞納状態のある認知症高齢者へのコーディネーション項目の得点平均値は3.4~3.7で低かった.また,第1因子~第3因子の間でもっとも得点平均値が低かったのは,地域のなかで認知症高齢者を支える人や場所を創出する項目群である第3因子であった.検定により有意な差が認められた因子は,地域包括支援センター保健師経験年数,地域ケア会議の年間参加回数,地域診断実施の有無であった.

    考察:地域ケア会議の参加回数や地域診断の実施が少ない要因は,実施の位置づけや実施目的を保健師自身が明確にできていないことが考えられた.尺度に示す第3因子の実施を促すためにも地域ケア会議の参加や地区診断の実施が求められる.

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