目的:外国人結核患者は年々増加しており,来日者数の多いアジア圏からの労働者や留学生の結核発症割合が高い.地域DOTS(直接監視下短期化学療法)で外国出生結核患者に適した支援を行うためには,出生国に特化した服薬中断要因を明確化する必要がある.本研究では,近年国内で最も発生数の多いベトナム出生結核患者(以下,ベトナム人結核患者)に焦点を当て,服薬中断につながる要因を抽出し,患者支援への示唆を得ることを目的とする.
方法:地域DOTSでベトナム人結核患者の通訳経験があり,医療用語に精通する通訳者5人を対象に,患者の服薬中断につながる要因について半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析した.
結果:服薬中断要因として,《結核治療による生活への経済的負担》《通院することへの負担》《正しく理解されない結核の知識》《結核治療を受けることによる周囲からの偏見視》《結核治療を身近でサポートする人がいない》の5つのカテゴリーが抽出された.
考察:結核治療による受療費と通院で割かれる時間がベトナム人結核患者の厳しい生活状況をさらに悪化させており,服薬継続には経済的負担が軽減されるように結核治療システムを整備することが求められる.また,DOTSでは患者に結核の正しい知識を繰り返し説明していくことも必要である.ベトナム人結核患者が結核治療を継続するには,服薬をサポートしてくれる信頼できる身近な存在が必要であった.