日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
25 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
研究報告
  • 竹村 和誠, 小松 美砂, 小池 敦
    2022 年 25 巻 3 号 p. 4-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:地域包括ケア病棟看護師が高齢者に対して実践している退院支援の状況を自己評価から明らかにし,関連する個人的要因や職場環境要因を明確化することを目的とした.

    方法:東海北陸厚生局管内の地域包括ケア病棟を有する47施設に所属する看護師968人を対象に,病棟看護師の退院支援実践自己評価尺度(DPWN)を用いて無記名自記式質問紙調査を実施した.

    結果:587人(回収率60.6%)から回答があり,584人(有効回答率60.3%)を有効回答とした.DPWN合計得点の平均点は100.31点であった.DPWN合計得点を目的変数として重回帰分析を行った結果,DPWN合計得点に関連する要因は,[仕事意欲](β=0.268, p<0.001),[職位“有”](β=0.099, p<0.01),[高齢者の家族介護経験“有”](β=0.101, p<0.05),[退院支援に関して院内での研修“有”](β=0.091, p<0.05),[退院調整カンファレンス以外に多職種と情報共有する機会“有”](β=0.093, p<0.05)であった.

    考察:仕事意欲を高めることや役職者からの教育や意識づけ,院内外の多職種と情報共有する環境を組織的に整備することや研修に参加しやすい体制を整えることが,高齢者に対する退院支援実践の向上に寄与すると考えられる.

  • 福田 聡子, 齋藤 基, 大澤 真奈美
    2022 年 25 巻 3 号 p. 12-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:全治療期間を地域DOTS(直接監視下短期化学療法)により経過した在宅高齢結核患者の服薬開始期,服薬維持期,服薬終了期における服薬アドヒアランスの維持・促進に影響する要因を明らかにする.

    方法:65歳以上の全治療期間を地域DOTSにより経過した10人に対して半構造化面接を実施した.データは服薬経過時期ごとにBerelson Bの内容分析を参考にし,質的記述的に分析した.

    結果:服薬経過時期別の要因は,服薬開始期では,【早期治癒に向けて服薬に取り組む決意】【自分に合った服薬・管理に役立つ工夫】【医師,看護職者等との関わりを通した関係性の構築】等,服薬維持期では,【服薬経験を通した服薬継続への意義の実感】【医師,看護職者により提供される服薬継続を促進する肯定的評価と調整】等,服薬終了期では,【服薬の完遂目前により後押しされる確固たる服薬への決意】【医師,看護職者等から提供される服薬完遂に向け共に進む姿勢を示す支援】であった.

    考察:今後の在宅高齢結核患者の支援においては,各服薬経過時期別の要因の特徴に応じて,信頼関係の構築,服薬効果に対する説明や評価のフィードバック,最後まで共に歩む姿勢等を通して服薬アドヒアランスが維持・促進できるようにする必要がある.

  • ─看取りのPDCAサイクルを用いた検討─
    小山 美香, 小松 美砂
    2022 年 25 巻 3 号 p. 20-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:介護老人福祉施設における高齢者の看取りについて,看取りのPDCAサイクルを用いて看護職の役割を明らかにする.

    方法:看取り介護を導入している介護老人福祉施設に所属する看護職12人に半構造化面接を行い,データを質的帰納的に分析した.

    結果:介護老人福祉施設において高齢者を看取るための看護職の役割として,【高齢者と家族が安心して施設で最期を迎えるための仕組みづくり】【職員が安心して看取りを実施するための教育的支援】【看取りにおいて医療的に必要となるケア計画の立案】【看取りにおいて適切な医療を提供するための臨床判断】【高齢者にとって苦痛のない看取りを実施するための多職種間の調整と情報共有】【看護職の不在時に看取りを行う介護職への支援】【家族の思いや意向に沿った支援】【高齢者への看取りに関する振り返りの実施】【看取りを経験した家族や介護職への配慮】の9カテゴリーと30サブカテゴリーが抽出された.

    考察:施設での看取りにおける看護職の役割についてPDCAサイクルを用いて検討した結果,看護職は体制の整備〔Plan〕・看取り介護〔Do〕・振り返り〔Check〕において医療的側面から関わり,さまざまな役割を有していることが示された.しかし,体制の改善〔Action〕に関するカテゴリーは生成されなかったことから,看護職が医療的ケアの実施状況等の評価を行い,課題を明確化するといった役割を担うことによって,看取り介護の体制の改善につなげる必要があると考える.

  • 森 礼子, 水谷 聖子
    2022 年 25 巻 3 号 p. 29-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:外国人結核患者は年々増加しており,来日者数の多いアジア圏からの労働者や留学生の結核発症割合が高い.地域DOTS(直接監視下短期化学療法)で外国出生結核患者に適した支援を行うためには,出生国に特化した服薬中断要因を明確化する必要がある.本研究では,近年国内で最も発生数の多いベトナム出生結核患者(以下,ベトナム人結核患者)に焦点を当て,服薬中断につながる要因を抽出し,患者支援への示唆を得ることを目的とする.

    方法:地域DOTSでベトナム人結核患者の通訳経験があり,医療用語に精通する通訳者5人を対象に,患者の服薬中断につながる要因について半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    結果:服薬中断要因として,《結核治療による生活への経済的負担》《通院することへの負担》《正しく理解されない結核の知識》《結核治療を受けることによる周囲からの偏見視》《結核治療を身近でサポートする人がいない》の5つのカテゴリーが抽出された.

    考察:結核治療による受療費と通院で割かれる時間がベトナム人結核患者の厳しい生活状況をさらに悪化させており,服薬継続には経済的負担が軽減されるように結核治療システムを整備することが求められる.また,DOTSでは患者に結核の正しい知識を繰り返し説明していくことも必要である.ベトナム人結核患者が結核治療を継続するには,服薬をサポートしてくれる信頼できる身近な存在が必要であった.

  • 山埜 ふみ恵, 草野 恵美子, 上野 昌江
    2022 年 25 巻 3 号 p. 37-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:住民主体の介護予防活動内での参加者同士のソーシャルサポート授受を促すきっかけと工夫を明らかにすることである.

    方法:研究参加者は住民主体の介護予防活動11グループでリーダーとして活動している16人である.データ収集は半構成的インタビューを行い質的に分析した.

    結果:研究参加者の性別は男性6人,女性10人で,平均77.3歳であった.リーダーが捉える活動のなかで参加者同士のサポート授受を促すきっかけは【地域住民同士のつながりの必要性への気づき】【近所で頻回に顔を合わせる気軽な機会が大事という実感】の2つのカテゴリーが抽出された.サポート授受を促すための工夫は【参加者同士がつながりやすい雰囲気づくり】【参加者1人ひとりを大事にした関わり】【参加者ができそうと思えることを引き出す】【負担感なく役割を担える働きかけ】【あえて役割を決めず自然に参加できる流れづくり】の5つのカテゴリーが抽出された.

    考察:介護予防活動を通して地域のつながりを構築したい思いが,活動内のサポート授受を促すきっかけとなっていることが明らかとなった.リーダーは活動のなかで参加者1人ひとりを大事にし,参加者の潜在能力を引き出す関わりとサポートしやすい雰囲気づくりを大事にしていた.活動内で役割を担うことについては,参加者の状況に応じた対応が必要である.介護予防活動を通じて,住民同士がサポートし合う地域づくりにつなげることが重要である.

第25回学術集会報告:学術集会長講演
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