抄録
本稿は,単音節形容詞“多、少、早、晚”が用いられた粘着型の状語と補語を取り上げ,プロトタイプ理論および有標性理論の観点から考察をしたものである。状語と補語の使い分けの根拠は,仕手の意図の有無に基づくと一般的に解釈されているものの,近年では,例外的な事象に関する指摘も見受けられる。本稿では,「意図的」と「非意図的」をそれぞれ典型的な状語と補語の有する複数の属性の1つとする张国宪2005の主張について,具体的に証拠を示し論証した。とりわけ,意図性を強弱の連続体をなすものとして捉えた場合,「意図的(状語)-非意図的(補語)」の対立の構図が明確となっているのではなく,あくまでも一種の傾向であることを改めて強調した。また,意図性以外に,状語と補語の用法には,話し手の視点や認識,感情といった主観性に関わる要因が重要な役割を果たしていることを明らかにした。そうしたことを踏まえつつ教学に関する提言を行った。