学術情報処理研究
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原著論文
全国18国立大学高精細遠隔講義システムの設計構築と課題
萩原洋一櫻田武嗣川島幸之助
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2009 年 13 巻 1 号 p. 40-48

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抄録

本論文では、多地点を高精細映像で結ぶ遠隔講義システムの設計と構築、問題点について述べます。近年大学間連携の流れが進み、複数の大学を結んだ遠隔講義が行われてきています。これまで、多くの大学を同時に結ぶ場合SCS(Space Collaboration System)を利用して遠隔講義が行われてきましたが、衛星通信を利用するため、天候に左右されたり、機器の老朽化による故障があったりと安定的に遠隔講義を行うことは難しくなっていました。一方でネットワークの広帯域化が進み、ネットワークを利用した遠隔講義を行うことも可能になってきましたが、これまでの多くの遠隔講義システムは画質がアナログテレビ以下で、詳細な資料等を提示しながら高度な教育を行うには不十分なものでした。そこで我々は、多地点を高精細映像で結ぶ遠隔講義システムを設計、構築することにしました。本構築では全国18国立大学法人をHD品質の高精細映像、高品質な音声で結び、実運用に向けてシステムの自動化など利用者の負担を減らす仕組みの設計・構築を行いました。全18大学を結んでシステム開設式と遠隔講義を行い、2009年2月から本格的な運用を開始しました。しかしながら、運用開始して間もないため、新製品に潜むバグの問題や、システムを利用する教職員の意識問題など課題が残っています。本システムは、利用者はWebから簡単な予約を行うだけで、後はシステム側が予約時間に自動的に機器の立ち上げ、設定、接続を行うもので、利用者の負担を減らすことが可能です。北海道から沖縄までの18国立大学法人をHD品質で結び、実運用を行うのは初めてであり、他のシステムと相互接続可能な本システムを核に、高精細映像、高品質音声を使った遠隔講義が広く行われることが期待されます。

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© 2009 学術情報処理研究編集委員会
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