抄録
症例は13歳男性. 小児科で急性骨髄性白血病 (AML) の診断の際, 前縦隔から右胸腔全体を占拠する巨大な縦隔腫瘍を指摘されていた. AMLに対し化学療法, 骨髄移植を行った後, 縦隔腫瘍の摘出術を施行した. 右肺は腫瘍に強く圧迫されており, 含気がなく完全に虚脱していた. 腫瘍摘出後の膨張も不十分なままであり, 術直後より再膨張に伴う右肺水腫を考慮し, 早期からステロイド, 利尿剤を投与した. PEEP補助などの処置を行なったが, 術後2日目には対側肺水腫の併発が疑われ, 呼吸不全のため一時的に人工呼吸管理を必要とした. 再膨張性肺水腫は一般的に予後良好であるが, 本例のような対側肺水腫を併発する重症例も稀であるが報告されている. 長期にわたり肺虚脱があった場合, および化学療法後など, その発症が懸念される時は早期から人工呼吸管理を躊躇しない積極的な治療を行なう必要がある.