抄録
【目的】昨今、健康と安全から天然酵母パンへの関心が高まっており、ドライイーストにはない独特のフレーバーと食感が好まれている。先に市販のドライイーストを対照にレーズン、米こうじ、ヨーグルトより得られた発酵液を用いてスペルト小麦並びに普通小麦でパンを調製したところ、その物性と抗酸化性に違いがみられた。そこで今回は同じ発酵液を用いてストレート法と中種法というドウの製法を変えたパンを調製し物性と抗酸化性について検討した。
【方法】発酵液はこれまでと同様に、レーズン、プレーンヨーグルト、米こうじを各々発酵(30℃、65%rh)させた。得られた発酵液25gと小麦粉(スペルト小麦又は普通小麦)25gを混ぜたドウを24h予備発酵させ、さらに同量の液と粉を加えて24h予備発酵させたものを中種とした。その中種に残りの分量の粉、液、砂糖、塩を加えて混捏し、一次発酵を行った。その後成型し、二次発酵後ドウのテクスチャー試験を行った。次いでスチームコンベクションオーブンにて焼成したパンの比容積及び破断応力を測定した。さらに上記焼成パンを凍結乾燥後、エタノールで抽出した上澄みについて、ケミルミネッセンス(化学発光)法を用いてペルオキシラジカル捕捉活性を測定した。対照はイースト及びストレート法で調製したパン試料とした。
【結果】粉の種類に関わらず、ドウの圧縮応力はレーズンとヨーグルトの発酵液で中種法の方が低値を示し、焼成パンの比容積はヨーグルト発酵液で中種法の方が大となった。破断エネルギーはヨーグルト発酵液で中種法が特に低値となった。パンの抗酸化能はレーズンとこうじ発酵液で中種法の場合に最も高く、特に普通小麦の方が製法の影響を受けやすかった。