抄録
症例は60歳代男性.当科初診の4年前に,健診時胸部X線にて左肺門部異常陰影を指摘され前医を受診した.CTにて径2cmの類円形腫瘤を認めたが臨床所見から悪性疾患を積極的に疑わず経過観察となった.2年後,腫瘤径2.5cmとなり末梢閉塞性肺炎が度々みられるようになった.発見から4年後,腫瘤径は3.5cmとなり閉塞性肺炎の増悪を来たしたため手術を施行したが,肺動脈への広範な腫瘍浸潤により肺全摘を余儀なくされた.病理検査にてリンパ上皮腫様癌・T2N1M0,stage IIBと診断された.EBER in-situ hybridizationはシグナル陰性であり,EBウイルスとの関連は証明されなかった.治療方針,特に手術施行時期に関して反省すべき症例であるが,リンパ上皮腫様癌の長期臨床経過を詳細に観察し得た貴重な経験であった.