2017 年 31 巻 1 号 p. 98-102
症例は32歳女性.乳糜胸を伴うリンパ脈管筋腫症に対して前医通院中であったが,その経過中膿胸を発症した.胸腔ドレナージと抗生剤で加療するも改善せず,当院転院となり手術を施行した.術後膿胸は改善したが,胸腔ドレーンを抜去後,喀痰の出現や,酸素化の低下など肺炎症状が出現した.胸部レントゲンやCTでも両側肺に網状粒状影,浸潤影を認めた.しかし,胸水や喀痰からは有意な起炎菌は認めなかった.喀痰Sudan染色を提出したところ,脂肪貪食マクロファージを認め,外因性のリポイド肺炎と診断された.手術によって生じた微少な肺瘻から乳糜胸水を逆行性に吸い込むことで発症したと思われた.治療は抗生剤等は使用せず,経過観察のみで症状は徐々に改善した.リポイド肺炎は稀な疾患だが,乳糜胸水を合併した胸部手術では,術後合併症として念頭に置く必要がある.