抄録
我々は肺腫瘍620例に対し外科治療を行ない, そのうち8例 (1.3%) に気管支カルチノイドを経験し, 又胸腺腫瘍75例のうち3例 (4%) の胸腺カルチノイドを経験し, それらについて臨床および病理学的な面から検討を加えた.気管支カルチノイドの8例中5例が中枢発生のもので, 3例が末梢発生であった.定型カルチノイド7例に対し, 非定型カルチノイドは1例で, 非定型例では肺門リンパ節転移をみた.手術は7例に肺葉切除が行なわれ, 1例では部分切除のみであった.いずれの症例も再発転移をみていない.小細胞癌と鑑別困難例がみられたため, RPMIで作成された非小細胞癌由来monoclonal抗体による免疫組織化学染色を行い有用であった.
胸腺カルチノイドは3例あり, 画像上浸潤型胸腺腫との鑑別は困難であった.1例では異所性ACTH症候群がみられた.1例では全剔出をなし得たが, 2例は部分切除に終り, 全例再発又は転移を起こし予後不良であった.