2020 年 8 巻 p. 117-128
筑波大学「ロシア語圏諸国を対象とした産業界で活躍できるマルチリンガル人材育成プログラム(2014–2018)」の成果と課題について、複数言語教育という観点に注意を払いながら報告する。本プログラムの目的は、日本とロシア語圏を自在に行き来し、自律的に活躍できる実務型グローバル人材を育成することである。本事業を通じて、Ge-NISプログラムに参加し、1年間の交換留学を経験した学生は、①総合的な言語能力(ロシア語、英語、現地語、日本語)、②総合的な実務能力(企画、組織、運営、調整)、③メタ認知能力(日本社会/母国や自分自身の客観視)の3つの能力を高めることができた。また、課題として、①日本人学生のための渡航前教育としての(ロシア語と英語以外の)現地語教育の充実、②プログラムの自走化、③グローバル人材として求められる能力の評価方法の確立の3つが明らかになった。