本研究では、シリアの日本語学習者が、内戦状況にある暮らしの中で、いかに日本語を意味づけているのか、さらに、彼女らのアイデンティティの構成に日本語がどのように関わっているのかを考察した。分析対象データは、シリアの日本語学習者2名に対して、2011年~2020年に複数回行った聞き取り調査と彼女らの手記である。 調査の結果、二人が日本語を、「内戦と対極にある平和の象徴」として、また、不安や悲しみを和らげる「生きがいのある日常をつくる媒体」として、さらに、「新しい自分」というアイデンティティを構成するものとして認識していることが明らかになった。