要旨:尼崎港内の直立護岸周辺で,有機物や重金属の環境動態に及ぼすムラサキイガイの影響を明らかにすることを目的に研究を行った.護岸壁面にはムラサキイガイが多量に付着し,その活発な摂餌活動によって,直立護岸前では植物プランクトン量は少なく,溶存酸素は低くなっていた.また,ムラサキイガイの糞や偽糞の排出によって,沈降物量は直立護岸から50mの港湾中央部と比べて2倍大きく,これを懸濁態有機炭素および窒素に換算すると港湾中央部と比べて3倍の値を示した.また,重金属の中でも特にZnの沈降過程にはムラサキイガイの摂餌作用が大きな影響を及ぼし,CdとPbはより粒径の細かい懸濁物の挙動に影響を受けていることが示唆された.