2022 年 26 巻 1 号 p. 33-40
「糖尿病患者へのエンボディメントケア」の第1番目のケアとなる『あいまいな体験に輪郭を与えるケア』の実践プロトコールを紹介し,有用性,臨床応用について1事例の実践を用いて検討することを目的とした.日常生活であいまいになっている身体の体験を患者の意識にあげ,患者自身が置かれている状況を解釈し,そのことによって現在の状況に身を置けることを期待したケアで,【身体の感覚に働きかけるケア】【見ていなかった足を見るケア】【全身をくまなく見るケア】【生活の体験を聴くケア】の4つで患者の中に在った患者自身にも意識されていなかった身体の体験が意識にあがり,しばらく運動をしていなかった身体や,家族を優先し野菜を摂取できない生活が表現され,自身の行動を肯定できない解釈がもたらされた.患者の身体と生活のつながりが見えるようになる本ケアは,糖尿病看護において有用であること,従来のケアプログラムでは,負担感を抱くと予想される患者,ある程度の高血糖状態の時期を有する患者への臨床適用が示唆された.