抄録
本研究は、自然災害が幼児のメンタルヘルスと発達に与える影響を整理し、適切な支援策を検討することを目的とした。災害後、幼児は身体的症状(消化器系不調、睡眠障害、倦怠感)や行動症状(情緒不安定、多動、攻撃性)を示すことが多く、これらはストレスによる自律神経系への影響と関連がある。また、幼児特有のトラウマ再演行動(災害の状況を模倣する遊び)も確認され、認知的・情緒的発達による影響が示唆された。特に、親のPTSDや家庭環境の不安定さが、幼児のメンタルヘルスや発達に悪影響を与える要因となる。支援策としては、トラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)や遊戯療法の有効性を論じ、保育者・保護者向けの心理教育や発達支援環境の整備、長期的フォローアップの重要性を強調した。これにより、地域・保育施設・家庭が連携した支援体制が不可欠であると結論づけた。今後は、幼児の発達特性に基づく支援プログラムの開発と有効性の検証が重要である。