日本地震工学会論文集
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論文
A/Dコンバータのハイブリッド利用による広ダイナミックレンジのデータロガーの開発
荒木 正之盛川 仁伊藤 貴盛谷川 正真松本 敬太郎
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2011 年 11 巻 3 号 p. 3_59-3_72

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抄録

 深い地盤構造を知りたいといった目的で行われる微動探査において必要とされる長周期領域の微動の振幅は短周期領域のそれに比べて非常に小さい。しかも,長周期領域ではアナログ回路が持つ1/f ノイズの影響を大きくうけるため,高価で高性能な機器を用いてさえも十分なS/N(信号ノイズ比) をもって観測することが困難な場合もある。
 このような問題を解決するために,長周期領域でも十分な分解能およびS/N を有する超低ノイズフロア,超高分解能のデータロガーを開発した。A/D コンバータ(以下,ADC)には近年低コスト化が著しい24bit のΔΣ 型を採用した。また,1 成分あたり3 チャンネルのADC を用いて,1 倍ゲイン(利得),256 倍ゲインの信号を並行して記録するとともに,同時に入力を短絡してデータロガーの電源リップルノイズも記録する,というハイブリッド方式を採用した。1 倍ゲインおよび256 倍ゲインの記録を組み合わせることで小さな入力信号から大振幅までADC の変換ノイズの少ない部分だけを用いて理論上で32bit相当の広ダイナミックレンジと高い分解能を確保しつつ,長周期領域における大幅なノイズ低減を目指した。特に,電源リップルノイズを信号から減算するという処理を行うことで,ノイズフロアの大幅な低下に成功した。
 データロガーの試作機を作成し,微動レベルが低い地域で実際にセンサーを接続してデータを取得し,開発したデータロガーの性能について検討した。その結果,単なる256倍ゲインの場合に比べて,本研究で提案するシステムでは長周期領域で30 倍以上S/N が拡大し,実効値で5 bit 程度ものダイナミックレンジの拡大を実現した。

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© 2011 一般社団法人 日本地震工学会
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