日本地震工学会論文集
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論文
多重非線形効果を考慮した簡便な強震動シミュレーション手法の検証とその予測問題への応用方法
野津 厚
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2016 年 16 巻 4 号 p. 4_106-4_125

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抄録

海溝型巨大地震などの想定地震に対する強震動予測を行う場合に、表層地盤の非線形挙動の影響を考慮することは重要である。著者らは既往の研究において多重非線形効果の概念を提案し、これを考慮できる簡便な強震動シミュレーション手法として、「堆積層における平均的なS波速度の低下率」と「堆積層における平均的な減衰定数の増分」を表す二つのパラメター(ν1とν2)を用いる方法を提案している。ただし、表層地盤の非線形挙動の影響を受けた強震記録がこれまで限られていたことなどから、多重非線形効果の観測事実に基づく検証と手法の検証は断片的なものに留まっていた。そこで、本研究では、東北地方太平洋沖地震がもたらした数多くの強震記録を活用し、上述の方法による強震動シミュレーションを行い、多重非線形効果の検証と簡便法の有効性の確認を行った。その結果、検討したいずれのケースにおいても、多重非線形効果に起因すると考えられる卓越周波数の低下と後続位相の継続時間の短縮が観測波形に認められ、また、これらの効果に対応する二つのパラメターを考慮することにより、表層地盤の非線形挙動を考慮しない場合よりも観測記録の再現性は向上した。また、得られた結果に基づき、予測問題におけるパラメター設定方法についても検討を行った。

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© 2016 一般社団法人 日本地震工学会
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