日本地震工学会論文集
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報告
2016年熊本地震最大前震 (Mj6.5) のKiK-net益城観測点における大加速度振幅の要因分析及び基盤地震動の推定
小林 源裕儘田 豊呉 長江
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2017 年 17 巻 4 号 p. 4_101-4_139

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抄録

2016年熊本地震の最大前震 (気象庁マグニチュード (Mj) 6.5) により1Gを超える大加速度を記録した基盤強震観測網 (KiK-net) 益城観測点における強震動の要因解明に資するため,鉛直アレー観測記録を用いた地盤同定解析及び一次元波動伝播解析に基づき強震記録を詳細に分析した.あわせて,強震記録のはぎ取り解析に基づき最大前震の地震基盤相当 (S波速度2700m/s) における基盤地震動を推定し,地震動レベル (基盤地震動加速度) を評価した.それらの結果,地震動はおよそ2~3Hzより高周波数側で増幅が顕著であり,強震動の要因の一つとしておよそ深度250m付近の地震基盤相当層より浅い地盤の顕著なサイト特性の影響があることを示した.一方,地震の短周期レベルは内陸地殻内地震の平均的な値であること,推定された基盤スペクトルは地震のω-2則に基づく震源特性及び伝播特性を考慮した地震基盤における理論基盤スペクトルからおおむね説明できることから,最大前震は地震規模と地震動レベルの関係において特異な地震ではないことを示した.なお,基盤スペクトルはおよそ0.4~4Hz付近において理論基盤スペクトルよりやや大きい傾向を呈しており,KiK-net益城観測点において断層の破壊伝播に伴うディレクティビティの影響が強震動に現れている可能性がある.したがって,最大前震によるKiK-net益城観測点の地表面における大加速度振幅は,顕著なサイト特性の影響に加えて断層の破壊伝播に伴うディレクティビティの影響により引き起こされたと判断できる.

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© 2017 一般社団法人 日本地震工学会
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