2023 年 23 巻 4 号 p. 4_24-4_40
経験的グリーン関数法(Empirical Green's Function Method,以下,EGF法)は過去に発生した地震の地震動の再現に関して実績が多く,広く用いられている手法である.しかし,要素地震の選定については明確な基準はなく,特に破壊伝播効果の影響については十分には考慮されていない.本研究では震源破壊過程が明らかな地震として2004年新潟県中越地震のM6以下の余震を対象に,点震源と仮定することができる地震としてM4以下の小地震とのフーリエスペクトル比から観測記録の特徴を分析した.その結果,工学的に主要な周波数帯の1 Hz程度において,既往の震源逆解析結果から推測した破壊方向に位置するForward地点と反対側のBackward地点とでは,破壊伝播効果の影響でフーリエ振幅スペクトルに2倍程度の差異が生じていることを示した.また,EGF法による波形合成においても同様に破壊伝播効果の影響が現れることを示した.次に本震を対象とした波形合成を行い,本震と要素地震の破壊伝播特性の違いが観測記録の再現性に大きく影響することを示した.また,地震動予測において想定地震の破壊伝播特性と近い地震を要素地震として用いることで予測精度が高くなる可能性があることを示した.最後に要素地震の破壊伝播効果を補正する手法を提案し,複数の観測地点で検証することでその有効性と今後の課題を示した.