日本地震工学会論文集
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論文
MeSO-net観測データを用いた東京湾直下プレート内地震の強震動シミュレーション
鈴木 亘木村 武志久保 久彦先名 重樹
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2023 年 23 巻 4 号 p. 4_54-4_69

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抄録

近年の首都直下地震の被害想定においては,南関東直下のフィリピン海プレート内のM7クラスの地震が発生確率及び被害の大きさの観点から代表的な地震として取り上げられている.本研究では東京湾直下のM5クラスのプレート内地震を要素地震とし,首都圏において稠密に展開されているMeSO-netで観測された波形記録を用いて,経験的グリーン関数法によりM7クラスの地震の強震動シミュレーションを実施した.経験的グリーン関数法を用いることで,実際に東京湾直下で発生した地震の震源特性や震源メカニズムと,首都圏直下の沈み込むプレートや厚い堆積層による複雑な地下構造の影響を踏まえた広帯域地震動のシミュレーションを実現した.内閣府中央防災会議(2013)による微視的震源特性を踏まえて強震動生成領域を設定し,波形フィッティングから仮定した要素地震の面積を基に強震動生成領域の分割個数を決定した.波形合成は要素地震の東西走向及び南北走向それぞれの節面に対して,破壊伝播が東京都区部に向かって進展する設定とした.MeSO-netは地中20 mで観測しているため,地表臨時観測記録に基づく震度増分を用いて地表震度分布を推定した.2つの断層モデルによる合成波形の加速度応答スペクトルを比較すると,破壊伝播方向に位置する観測点では1秒前後の応答が卓越する傾向が見られた.震度分布では,東京都区部は2つの断層モデルによる震度の大きさは同程度である一方,東西走向断層モデルでは多摩地域において,南北走向断層モデルでは千葉県北西部から茨城県にかけての破壊伝播方向延長に位置する地域で震度の大きい観測点が多く見られる.要素地震において多摩地域等の震源域より遠方でも震度が大きいという特徴が見られており,この特徴と破壊伝播の効果が重畳し,上述の震度分布が現れたと考えられる.

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