2024 年 24 巻 5 号 p. 5_176-5_186
東北大学旧人間・環境系教育研究棟を対象に,Augmented Kalman Filter(AKF)による非観測階における非線形応答推定に関する検討を行った.まず部分空間法により応答が線形領域に留まっている小地震記録を選定するとともに,AKFが必要とする線形時の層剛性及び減衰定数を推定した.次に応答が非線形領域に達している地震記録を対象にAKFを適用し,非観測階における絶対加速度及び相対変位の推定精度を検討した.その結果,AKFが実建物の非線形応答推定に対して有効であることが確認され,特に出力に加速度及び変位の双方を用いることで推定精度が向上すること,非線形応答の推定に必要な非線形項のプロセスノイズの分散については,L-curve法により最適値の設定が可能であることが確認された.