2024 年 24 巻 5 号 p. 5_285-5_297
地震時の構造物の非線形挙動の簡易な推定法として,エネルギー一定則および変位一定則が存在する.一定則で得られる結果と非線形動的解析による挙動には当然のように差が存在するが,その差異について十分に整理されているとは言い難い.そこで本検討では,比較的規模の大きな地震による地震動波形と多様な構造物条件を用いて,非線形動的解析と一定則による応答評価を網羅的に実施することで,両者による応答の差異を考察した.その結果,全体的な傾向として構造物の固有周期が長い場合にはエネルギー一定則では応答を過大評価し,固有周期が短い場合には変位一定則が応答を過小評価する傾向を確認した.ただし個別に見た場合には,地震波のフーリエ振幅の極大値,極小値を示す周期帯において,応答の予測精度が低下することを確認した.