経済地理学年報
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論説
東京を中心とするニット製衣服産業の生産システム
遠藤 貴美子
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2019 年 65 巻 2 号 p. 151-176

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抄録

    本研究は,東京を中心に広域な生産システムを構築している丸編ニット製衣服産業を対象に,情報伝達および関係性にもとづくコミュニケーションに着目して,企業間・企業内事業所間の連関構造を解明するとともに,東京における集積がどのような機能を担っているのかについて検討した.その際,生産システム上でオーガナイザー役を担っている東京のニットメーカーを分析の主眼とした.
    ニットメーカーは都区内における受注先や,既存の工業集積内における資材購買先・各種加工業者群との間で,その空間的近接性を活かして迅速で円滑な暗黙知の伝達・共有や意思決定を活発に行っており,ファッション化の進展やデザインの高度化,小量生産化,短サイクル化のもとで集積の意義が強められている側面が明らかとなった.地方圏や海外といった遠隔地との間では遠隔通信手段によるコミュニケーションが主であるが,物理的距離,場合によっては心理的距離を隔てての意思疎通を可能にしているのは,ニットメーカーと地方圏・海外の生産拠点との間の長期取引および過去の対面接触の蓄積によって構築された,相互理解でもあることが明らかとなった.こうしたニットメーカーの調整機能は取引費用の削減に貢献しており,生産システムの地理的広域化がなされた現在,これまで以上にその機能が重要になっているといえる.

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© 2019 経済地理学会
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