日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
大腸穿孔で発症し,急激な転帰をたどったClostridium perfringens感染症の一剖検例
甲斐 敬太小林 毅一郎浦田 雅子本村 友一能城 浩和宮崎 耕治
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キーワード: 敗血症, 腸穿孔
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2010 年 30 巻 3 号 p. 473-476

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抄録

67歳男性。10年前に早期胃癌に対し幽門側胃切除(BillrothI法再建)の既往がある。突然の激しい下痢と腹痛を訴え,下部消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。術後集中治療を行ったが播種性血管内凝固が進行し,発症3日で死亡した。血液培養からA型Clostridium perfringens(C. perfringens)が同定され,穿孔部の腸管にも菌体を認めた。剖検での直接的な死因は敗血症であった。C. perfringens A型は食中毒の原因となり,腹痛,下痢を発症する。多くは24時間程度で軽快するが,敗血症をきたすと高度の溶血,播種性血管内凝固により致命的となる。死亡報告例のほとんどが基礎疾患を有しているが,本例は胃切除後以外に基礎疾患はなかった。C. perfringens感染症が腸管穿孔で発症することはまれだが,重度の下痢を伴う例では本症を念頭においた初期対応が重要である。

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© 2010 日本腹部救急医学会
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