日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
心肺停止に対する蘇生治療後に確認されたS状結腸軸捻転の一救命例
前田 敏樹藤原 雅光井上 仁白川 洋一
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2012 年 32 巻 4 号 p. 809-813

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抄録
向精神薬の長期服用者の中には薬物の作用による腸管運動の鈍化のため慢性的な便秘傾向となり,S状結腸軸捻転に陥りやすいという特徴がある。さらに精神発達遅滞者の場合は,腹痛などの症状をうまく表現できず他覚所見もとりにくい。症例は精神発達遅滞で施設入所中の59歳男性。食物を喉につまらせトイレで倒れているところを発見される。ただちに施設職員による一次救命処置(basic life support:BLS)が施行されたが,当院到着時は心肺停止状態であった。心肺蘇生を継続しつつ気道確保を行ったところ心拍再開を認めた。その後腹部の異常な膨隆に気付きcomputed tomography(CT)をはじめとする検査を行い,S状結腸軸捻転と診断し救命し得た。本症例はbystander によるcardiopulmonary resuscitation(CPR)が適切に施され,心拍再開とともに高次脳機能障害を残さず回復したが,窒息の原因であった S状結腸軸捻転による絞扼性イレウスの診断に苦慮した。心肺蘇生を行いつつ,心停止に至った原因を迅速に検索し,特に短時間での自己心拍再開例であるなら,心肺蘇生後といった不安定な循環状態であっても積極的に手術治療に踏み切り,根本治療を行うことが可能と思われる。
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© 2012 日本腹部救急医学会
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