抄録
要旨:症例は79歳女性。2日前からの心窩部痛と嘔吐を主訴に受診した。意識レベルは清明でバイタルサインは安定していた。上腹部に軽度の膨隆と自発痛を認めたが圧痛や腹膜刺激症状は認めなかった。MDCTのMPR画像で横行結腸の腹側に拡張小腸像を認め,横行結腸を乗り越える部位での腸管beak signと腸間膜収束像も認め,大網裂孔ヘルニアと診断した。腸管虚血性変化を示す所見は認めず,腹部所見も軽快傾向にあったのでイレウス管挿入にて保存的加療を開始した。上部小腸の減圧は良好であったが,裂孔ヘルニア嵌頓は解除されなかったため第5病日に開腹手術を施行した。空腸が20cmに亘って異常大網裂孔内に陥入していたが,腸管の虚血性変化は認めなかった。開腹歴のないイレウス症例では本疾患も念頭に置く必要があり,診断にはMDCTによるMPR画像が有用であった。