2013 年 33 巻 8 号 p. 1305-1309
症例は45歳,男性。5日間続く38℃台の発熱と腹痛のため当院を受診した。下腹部の広範囲に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認められなかった。右鼠径部に用手還納不能な鶏卵大の腫瘤を認めた。血液検査でWBC 12,800/μL,CRP 36.31mg/dLと異常高値を認めた。腹部CTで,広範囲の大網が高吸収域からなる層状構造を示し,右鼠径管に連続していることが確認できた。右鼠径ヘルニアによる続発性大網捻転症を疑い,入院翌日に手術を行った。下腹部正中切開で開腹したところ,捻転により広範囲に血行障害に陥った大網を認め,先端が右鼠径部に連続し,嵌頓していた。大網を還納し,捻転の頭側で大網を切除した。鼠径ヘルニアに対しては内鼠径輪縫縮のみを行い,術後19日目に改めてメッシュプラグ法で鼠径ヘルニア根治術を行った。腹痛を主訴とする鼠径ヘルニアにおいて,本疾患も念頭におく必要があり,診断にはCT検査が有用であった。