日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
心肺蘇生に伴う胃破裂の救命例
淺井 聖子岸 真也遠藤 泰諸角 強英
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2015 年 35 巻 4 号 p. 453-456

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抄録

症例は93歳,女性。誤嚥による窒息に対しバイスタンダーによる約5分間の心肺蘇生を含めた病院前救急処置を経て当院に搬入となった。気管挿管後のCT検査で多量の腹腔内遊離ガス像と小網から肝門部にかけての泡沫状ガス像を認め上部消化管穿孔と診断し手術を行った。開腹で無臭のガスが噴出したが腹水はなく,胃体上部小弯側に約4cmの漿膜筋層の縦走裂傷を認め,心肺蘇生に伴う胃破裂と診断し破裂部の単純縫合閉鎖と減圧胃瘻造設術を行った。術後の上部消化管内視鏡検査で複数の粘膜裂傷部を確認,経口摂取と経管栄養を併用し軽快退院した。心肺蘇生による胃破裂の合併は0.1%とまれだが,不適切な換気や胸骨圧迫などが発症に関与する。予後は原疾患に因るものの手術にて軽快した報告が多い。心肺蘇生後に画像上多量の腹腔内遊離ガス像を認める症例では迅速に本疾患を診断し,蘇生後であることに躊躇なく治療することが重要である。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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