日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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症例報告
閉塞性ショックのため救急室で開腹した腹部コンパートメント症候群
水村 直人小川 雅生奥村 哲豊田 翔今川 敦夫川崎 誠康
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2016 年 36 巻 4 号 p. 781-785

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抄録

閉塞性ショックは迅速な診断と治療を必要とする。だが,腹部コンパートメント症候群(ACS)により閉塞性ショックが生じることはあまり知られていない。79歳の男性が腹痛で救急搬送され,CT検査後に急激な呼吸状態悪化と血圧低下を認めた。身体所見では腹部緊満,CT検査では著明な小腸拡張による下大静脈圧排を認めた。腸閉塞に伴うACSと診断し,救急室で開腹すると呼吸循環動態が急激に改善した。腸管壊死は認めず,腸閉塞の原因は癒着であった。ACSは腹腔内圧が上昇し閉塞性ショックを生じる。腹腔内圧測定ができない急変時の診断は困難であるが,救命には開腹減圧術が必要である。また本邦報告例の約半数でも腹腔内圧が測定されていないが,ACSを生じる可能性がある患者では定期的な腹腔内圧測定を行い,手術時期を見極める必要がある。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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