2016 年 36 巻 5 号 p. 871-875
虚血性心疾患の治療において,抗血小板療法は必須である。抗血小板薬は主にステント血栓症の予防に使用される。冠動脈ステントは再狭窄抑制型の薬剤溶出性ステント(DES)が主流で,DES留置後12ヵ月間はアスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬,その後はアスピリン単剤で投与することが推奨されている。これら薬剤には拮抗薬はなく,抗血小板作用の回避には血小板寿命を考慮した7~14日間の休薬しかない。一方,抗凝固薬は主に心房細動の脳梗塞予防に使用される。ワルファリンが使用されてきたが,最近では新規抗凝固薬(NOAC)の使用が増加してきている。NOACは半減期が短く,手術前の中止期間は短期間でよい。抗血栓薬内服中の患者のリスクは一様でないため,中止による合併症および出血リスクについて,関連する複数科の医師がコミュニケーションをとって検討し,適宜対処することが重要である。