2020 年 40 巻 1 号 p. 69-72
症例は67歳の女性で,自動車事故後の右上腹部痛を主訴に救急搬送された。受診時は上腹部に打撲痕と疼痛を認め,腹部造影CT検査で右側腹部に高吸収を示す腹水貯留と,内部に造影剤漏出を伴う腫瘤を認めた。大網からの出血が疑われ,腹部血管造影検査を施行すると,右胃大網動脈の造影で同血管の分枝の末梢に造影剤漏出を認めた。血管の屈曲蛇行により出血部位へのカテーテルによるアプローチが困難であったため,塞栓術は困難と判断し,腹腔鏡下大網部分切除術を施行した。腹部鈍的外傷による腹腔内出血の原因として,単独の大網出血はまれである。経カテーテル動脈塞栓術は低侵襲であるが,出血部位へのアプローチが困難である場合があり,また血管の豊富な交通性から確実な止血が得られにくい可能性がある。一方手術加療では,大網へのアプローチや大網切除の手技は比較的容易で,とくに腹腔鏡手術では低侵襲に施行できるため有用であると考えられる。