2020 年 40 巻 4 号 p. 563-566
症例は,81歳男性。前医のCT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで当科紹介。採血や理学的所見は異常なく,腹膜刺激症状も認めなかった。左鼠径ヘルニアを認めるが,臥位で容易に還納できた。腹部造影CTで著明な腹腔内遊離ガスと腸管気腫を認めたが,腹水は認めなかった。α–グルコシダーゼ阻害薬(α–glucosidase inhibitor:以下,α–GI)を内服しており,便秘傾向も認めた。緊急性はないと判断して,α–GIを約1ヵ月間休薬後に腹腔鏡下ヘルニア修復術の際に審査腹腔鏡を同時に行った。審査腹腔鏡で腸管気腫を認めたが,腸管穿孔を疑う所見は認めなかった。左鼠径ヘルニアはS状結腸が高度癒着しており,鼠径部切開法で修復した。術後1ヵ月のCT検査で腹腔内遊離ガスと腸管気腫は消失していた。腹腔内遊離ガスを伴う腸管囊胞様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:以下,PCI)を1ヵ月間経過観察し,腹腔鏡でも腹腔内観察でき,自然軽快したPCIの1例を経験したので報告した。