日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
切除範囲診断に苦慮した糖尿病性ケトアシドーシスに合併した壊死性虚血性大腸炎の1 例
山田 正法瀧井 麻美子真弓 勝志竹村 雅至
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2022 年 42 巻 1 号 p. 47-49

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抄録

症例は61 歳女性,1 型糖尿病で加療中。X 年11 月X −1 日に嘔吐・下痢を主訴に近医受診,糖尿病性ケトアシドーシスの診断のもと11 月X 日当院に搬送された。10 時間後(前医受診時から)に血便と腹部全体の筋性防御を認め,腹部単純CT では横行結腸に壁内気腫,腸管の全層性浮腫と門脈気腫を認めた。腸管虚血を疑い腹腔鏡検査を施行したところ,混濁した黄色腹水と横行結腸の漿膜面に壊死巣を認めたため開腹手術に移行した。壊死巣を認めた横行結腸から下行結腸まで切除したが,残存腸管は浮腫を呈していた。切除腸管内腔を確認したところ粘膜の壊死を切除腸管全体に認めた。さらなる切除範囲を考慮するため下部消化管内視鏡検査を施行し,最終的に結腸の全摘・回腸人工肛門を造設した。病理組織学検査では粘膜固有層に著明な線維性浮腫と粘膜下層の浮腫および好中球浸潤を呈し,グラム陰性桿菌の増殖と粘膜腺管の脱落を認めており,短時間に腸管虚血および壁内気腫を発症したと推測された。本症は急速に病状が悪化し広範囲に及ぶこともあり,診断が迅速に行われること,また切除範囲考慮のため術中下部消化管内視鏡検査が有用と考えられた。

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© 2022 日本腹部救急医学会
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