2025 年 45 巻 3 号 p. 426-429
性的嗜好の多様化に伴い,肛門内異物挿入による緊急手術例の報告が散見される。症例は63歳,男性。風俗店で女性の前腕を肛門より30cm挿入した直後から腹痛と嘔気が出現し,約30時間後に当院を救急受診した。問診と造影CTから直腸穿孔を疑い,穿孔性腹膜炎の診断で約38時間後に緊急手術の方針となった。下腹部正中切開で開腹,直腸膀胱窩に淡血性の腹水を認めたが便汁漏出は認めず,周囲腸管の炎症も比較的軽度であった。腹膜翻転部から約10cm口側の直腸Rs部に1cm大の全層性穿孔部を同定,穿孔部を縫合閉鎖しS状結腸に双孔式人工肛門を造設した。経過良好で,術後13日目に自宅退院した。性的嗜好に起因する直腸穿孔においては,羞恥心から正確な病歴聴取が困難となる可能性があるが,患者の羞恥心に配慮しながら詳細な病歴聴取を行うことで正確な診断や迅速な治療介入につながると考えられた。