2025 年 45 巻 4 号 p. 480-484
症例は83歳,女性。腹部膨満を主訴に近医を受診し,CT検査で腸閉塞を指摘され当院へ紹介となった。来院時の造影CT検査で腫大した左卵巣を認め,下行結腸の拡張を認めた。S状結腸・左卵巣の血流は保たれており,緊急性は乏しいと判断して,同日精査目的で入院となった。第2病日の下部消化管内視鏡検査でS状結腸の粘膜面に異常は存在しなかったが狭窄を認めたため,経肛門的にイレウス管を挿入し,口側を減圧したうえで第4病日に手術を行った。開腹したところ腫大した左卵巣が捻転していた。卵巣に癒着したS状結腸右側の脂肪垂が卵巣の捻転に巻き込まれて牽引され,S状結腸閉塞の原因となっていた。脂肪垂を切離したところ腸閉塞が解除され,卵巣捻転も解除された。左卵巣を摘出して手術を終了した。術後経過は良好で術後22日目に退院となった。左卵巣茎捻転に伴って発症したS状結腸閉塞の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。