2026 年 46 巻 5 号 p. 627-631
全結腸型壊死型虚血性大腸炎はまれであるが致死率が高い。今回われわれは,術前化学療法後の膵癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(以下,PPPD)翌日に発症した1例を経験した。症例は66歳男性,軽症直腸炎型潰瘍性大腸炎(以下,UC)の既往歴がある。PPPD翌日に呼吸苦,腹部膨満,血圧低下を認めた。腹部骨盤部造影CTで左側結腸の造影不良と著明な拡張を認め,結腸壊死と診断し緊急手術を施行した。漿膜面の血流は保たれていたが,粘膜壊死が広範であり,横行結腸から直腸Ra切除・人工肛門造設を行った。病理組織学的所見ではUCの再燃所見はなく,虚血性腸炎の所見であった。高侵襲手術,術前化学療法,UC既往,腸管内圧上昇などが発症に関与した可能性がある。本疾患は進行が急速で予後不良であり,早期診断と迅速な外科的介入が重要である。本例では術後早期の異常を迅速に捉え,手術に踏み切ったことが救命につながったと考えられた。